2015.04.25更新
相続分の譲渡(遺産確認の訴え)
1.「相続分の譲渡」とは、共同相続人の1人が、遺産(積極財産と消極財産を包括したもの)の全体に対する割合的な持分を、他の共同相続人に譲渡し、その持分の全てを失うことをいいます。
2.遺産分割の調停手続において、共同相続人の1人が、相続分の譲渡をして、調停手続から脱退するということは、よく行われています。
3.ところで、遺産分割調停の前提問題として、「遺産帰属性(当該財産が遺産に帰属するかいなか)」が問題になる場合があります。
4.この問題の解決は、最終的には「遺産確認の訴え」によることになりますが、この訴えは、遺産分割調停を申し立てる家庭裁判所に対してではなく、地方裁判所に対して行わなければなりません。
5.私も、遺産確認の訴えを数件担当したことがありますが、この訴え提起後に共同相続人の1人が相続分の譲渡をした場合、その者を手続から「脱退」(訴えの取下げ)させることが可能(有効)かという点については、調停手続からの脱退とは異なる問題がありました。
遺産確認の訴えは、共同相続人全員を当事者として行うべき(固有必要的共同訴訟)であることとの関係上、訴え提起時には当事者であるべき(当事者適格)者を、手続から脱退させること(訴えの取下げ)は無効ではないか、という問題です。
6.この問題について、近時、最判は、相続分の譲渡をした者は、遺産確認の訴えの当事者適格を有しない、という判断をしました。
7.この判断は、遺産確認の訴えが、遺産分割の調停(ひいては審判)の前提問題の解決という機能を有するものであることから、遺産分割調停(審判)の当事者となるべき者が、遺産確認の訴えの当事者適格を有するとすべきである(すなわち、相続分の譲渡をした場合に遺産分割手続から脱退できる者に対しては、遺産確認の訴えを取り下げることができるとすべきである)という理論によるものです。
2015.04.04更新
相続あれこれ
1(1)以前に依頼を受けた方から、所有不動産について、管理の手間がかかるために売却したい、との相談を受けました。
(2)相続対策の相談もありましたが、ア)生命保険金の非課税金額(相続税の課税価格からの控除金額)、イ)遺留分減殺請求権、ウ)代償分割の代償金の必要性、等について、既に一定の知識を有しておられました。ご自分で、各種勉強会(セミナー)に参加され、それらの知識を「体得」しておられるようです。
2(1)現在就任している相続財産管理人の案件では、相続財産である複数の不動産の名義人が、それぞれ、ア)被相続人、イ)被相続人の父、ウ)被相続人の祖父、エ)被相続人の曾祖父、とまちまちになっていました。
(2)この案件の相続人が何名になるか調査中ですが、今後必要になる手続の煩雑さを思うと、ご自分が所有されている不動産の登記名義書き換えが未了でないかを確認しておくことも、相続対策として大切なことだと、あらためてわかりました。
2015.02.20更新
相続財産としての株式
1.被相続人が保有していた株式を、相続人らが遺産分割未了のまま準共有していることはよくあります。
2.とりわけ、同族会社の株式の準共有者となった亡経営者の相続人らが、経営の問題と遺産分割の問題を同時に抱える状況において、相続人の1人が全株式について議決権を行使し、会社もその者の議決権行使に同意した場合に、他の相続人(株式準共有者)から、株主総会の効力を争われるということがあります。
3.この点に関する最高裁判例が、昨日(2月19日)出されました。
概要、準共有株式の議決権行使に関する定め(権利行使者の指定及び通知 会社法106条本文)を欠く場合、当該議決権行使は、会社が同意をしたとしても適法とならず、準共有する株式の管理に関する行為として、相続人らの持分の価格に従って、その過半数で決定されるものというべきだ(民法252条本文)、と判示しています。
2015.02.13更新
被相続人の相続財産
1.遺産分割や遺産整理のご依頼を受けて、相続財産を調査すると、既に故人となっている被相続人の配偶者や被相続人のご両親名義の財産が明らかになることがあります。
2.被相続人の配偶者(故人)名義の財産がある場合、相続人が被相続人らの子のみであって、子らが相続財産を共有している状態であるというばかりではなく、被相続人の配偶者(故人)に先夫や先妻がいる場合、その間に子がいる場合等、被相続人の配偶者(故人)の相続人が他に存在する場合もよくあります。
3.上記2のような事実関係が明らかとなると、被相続人の遺産相続に関して協力を得なければならない者が増えます。当初は争いの無い案件だと思われていたものが、調停等の手続を要するように発展してしまうことも少なくありません。
4.例えば、Xさんの夫Aさんが亡くなり、Aさんの相続に関してXとXAの子Yらが遺産分割調停をしていたとします。その調停の途中でXさんが亡くなった場合、①Xさんの固有財産が無ければ、YらはXさんの遺産分割調停を別途申し立てる必要はありません。しかし、②Xさんに固有財産がある場合や、Yらの中にXから特別受益を受けたものがある場合には、Xさんの遺産分割調停を別途申し立てる必要があります。そして、Xさんの遺産として、XさんがAさんの遺産相続時に取得する相続分2分の1の割合での共有持分権も含めることになります。
2014.12.26更新
関連士業
1 相続前の増税が近付いています。
(相続税及び贈与税の税制改正 平成27年1月1日施行 国税庁HP)
2 相続関係の案件では、
(1)①相続税、②不動産売却後の譲渡所得税関係は、税理士
(2)相続や、不動産の売却等による所有権移転登記手続関係は、司法書士
の各先生方に依頼しています。
3 これまで、多くの案件を扱う中で、自然と、他士業の先生方の①料金や②知識量・経験量の差を実感してきました。
4 とりわけ、私が関与する案件は、①相続税申告期限内に遺産分割が完了しないといったものや、②遺言執行者の選任、相続放棄、相続財産管理人の選任、限定承認、遺留分減殺、成年後見・・といった各事情が入り混じっているもの等、通常ではないパターンが多く、税理士や司法書士の先生方の高い能力や、豊富な経験が必要となる案件ばかりです。
そのため、意識せずとも、案件処理の中で上記のような実感を得ることになります。
5.本日(12月25日)の日経新聞に「税理士なら相続も詳しいと考えがちだが、年間の相続税申告件数(5万件強)を全国の税理士数(7万人強)で割ると0.7件。年間1人1件にみたない計算だ。」との記事が掲載されていました。
税理士の選択は、重要であると思います。
6.従前、上記4①②のような案件で、被相続人の生前から同人の税務に関与していた税理士ではなく、別の税理士に依頼をしたこともありました。
2014.08.05更新
『第2版 家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務』[相続]
1.上記タイトルの本を購入した。
2.初版の589頁から671頁に増頁されていました。
3.先日、従前私が担当していた、相続人不存在の相続財産管理人ではなく民法918条2項の相続財産管理人に関して、相談を受けました。
4.本書籍の旧版には、この点の記載がありませんでしたが、今回の第2版には、4頁ほどの記載がされていました。
5.第2版には、「限定承認」や「死因贈与執行者」についての記載も追加されており、一読することが絶対に必要だと思います。
2014.08.04更新
売却困難な不動産
1.亡父と子が共有していた不動産を任意売却しました。
2.亡父の共有持分については相続財産管理人として、
子の共有持分については破産管財人として、それぞれ
家庭裁判所、地方(破産)裁判所に、処分に対する許可
を得ました。
3.上記不動産とは別に、亡父も子も、売却困難な不動産
を所有していました。
亡父所有の不動産は、親族関係者が引取り(名義変更)
をします。
子所有の不動産は、財団放棄をしますので、名義変更
はしません。
4.子所有の不動産は、なぜ名義変更が不要なのか(亡父
の相続財産管理人として行う処理との違い)について、
財団放棄という処理になることを説明しました。
2014.07.30更新
限定承認
1.もともと限定承認の手続は複雑であるが、交通事故(死亡事故。
相続人自身も被害者の場合)によって相続が開始した場合、損害
を相続財産と、相続人固有の損害に分別する手続が必要となります。
2.家庭裁判所における分別の手続につき、①権限外行為許可が
あれば分別が可能とするのか、②他の手続(特別代理人等の
選任等)を必要とするのか、が問題となります。
3.限定承認をしない場合でも、遺族が、両親・配偶者・子の場合
には、①慰謝料や②逸失利益を各当事者間で分別する手続を
要する場合があるため、やはり上記2と同様の問題がおきること
があります。
2014.07.19更新
所有者不明(不存在)の不動産
1(1)不動産を購入するために、目的不動産の登記簿謄本を取得
したところ、目的不動産の共有者のうち1名が、行方不明であ
ることが判明した、という案件の相談を受けました。
(2)また別件で、地代が未払いであるため、建物収去の請求をし
ようとしたところ、建物所有者が死亡しており、相続人が不存在
であることが判明した、という案件がありました。
2 上記(1)の案件では、不在者財産管理人選任の申立が、上記
(2)の案件では、相続財産管理人選任の申立が必要になります。
3 いずれの申立においても、各財産管理人の候補者の推薦が
可能ですので、1件につき、知人の弁護士に候補者への推薦を
打診する電話をしました。
4 最近、大阪弁護士会の月報に、「『月5万円の法律事務所』を
考えてみませんか?」という文章が掲載されたようです。家賃や
人件費を削減して経費を月10万円に収めれば、月30万円の売
上で、十分生活できるという内容がありました。
(もっとも、月10万円の経費に含まれていない「弁護士会費」に
ついては、何故下げないのか?という議論も含めて、まったく
触れられていませんでした。)
5 上記の各財産管理人の案件については、依頼者の資金的
な都合もあり、報酬はあまり期待できませんが、上記4のよう
な文章が掲載され、若手の参加希望を広く募っているという
現状の中では、1件でも受任事件が増えることは、ありがたい
ことなのだと思います。
2014.06.14更新
換価分割か代償分割か
1(1)遺産分割において、不動産を売却処分して代金を分割する
ことを予定している時、不動産の名義が、共同相続人の共有
名義ではなく相続人の1人の単独名義である方が、売主側が
1人になるため、売却処分における手続が容易です。
(2)(1)の場合、換価分割にするか、代償分割にするかという点
を検討することがあります。
2.(1)換価分割か代償分割かについては、譲渡所得税の計算の
上で違いがあるようです。
(2)ア 換価分割の場合、換価分割を受ける各相続人が譲渡
収入金額を得たとして、譲渡所得税の申告をします。
イ 相続で取得した不動産の譲渡については、一定の条件
で、相続税の一部を譲渡所得算出の際の取得費に加算
すること ができます。
ウ そのため、換価分割か代償分割かは、譲渡所得税の
計算上、相続税を取得費に加算できるか(譲渡所得金額
を減額できるか)に違いがでるのです。
(3)単独名義(売却処分までの管理人的立場の人)の登記に
ついても、どのような書類が必要となるのかを、司法書士の
先生に確定してもらうことが必要です。
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