相続ブログ

2014.02.08更新

相続財産の払戻し

1(1) 被相続人の預金債権は、相続により、法定相続分に応じて、
      各相続人が分割債権を取得します(相続人が子3人のみの場合、
      各人3分の1の預金債権を取得します)。
    そのため、各相続人が、法定相続分に応じた預金債権の払戻
       しを、金融機関に対して請求できることになります。
 (2) しかし、相続人の1人から、金融機関に対して、法定相続分に
       応じた払戻しに応じないように連絡があった場合、他の相続人が
       払戻し請求をしても、金融機関がそれに応じないことがあります。

2(1) そうすると、払戻しに応じてもらえなかった相続人は、金融機関
      に対して、預金債権払戻請求の訴訟を提起することになります。
   この時、金融機関に対して払戻しに応じないように連絡した相続
    人は、金融機関側に「補助参加」することができます。
(2) 「補助参加」とは、当事者(原告・被告)以外の、その訴訟の結果
    に利害関係のある者が、自分の利益を守るために、当事者の一方
    を「補助」して、その訴訟に参加することです(当事者に準ずる立場
    になります)。
(3) また、金融機関から、他の相続人に対して、補助参加することが
    できることを告知することもできます(「訴訟告知」といいます)。この
    告知を受けた者は、参加しなかったとしても、参加したのと同じ扱い
    を受ける(判決の効力を受ける)ことがあります。

3(1) 遺言書があっても、その遺言の対象に預金債権が含まれるか
      に問題がある場合、預金払戻請求訴訟がなされることがあります
      が、この場合にも他の相続人を補助参加させるのが一般的です。
   大阪高裁平成25年9月5日(判時2204号39頁)でも、払戻請
     求をした相続人以外の相続人が補助参加していました。
(2) この高裁判決は、「財産を全てまかせる」と書かれた遺言は、①
    相続財産の全てを遺贈したということ(包括遺贈)なのか、②中心
    となって遺産分割手続きをして欲しいということなのか、が争われ
    た、 遺言の解釈の問題です。
(3) 第一審では、②の意味だと判示しましたが、上記高裁判決は、
    ①の意味だと判示しており、下級審での判断が分かれている状
   況 です。

2014.02.07更新

遺言作成者の増加

1.法曹関係者のブログで引用されていた、1月28日の静岡新聞に、
 静岡県内での遺言作成者が、ここ数年で急増しているという記事
 が掲載されていました。
  急増の背景には、「終活ブーム」や、東日本大震災後に「自分も
 いつどうなるかわからない」という心理が働いたことがあるのでは
 ないか、と書かれていました。

2.また、同記事には、
『公正証書遺言は資産評価額に応じて手数料がかかるものの、
法的拘束力が強いため活用が多い』
とも書かれていました。
 「法的拘束力が強いため」という表現は、誤解を招くおそれが
あると思います。

3(1)遺言の方式には、
    ①自筆証書遺言
    ②公正証書遺言
    ③秘密証書遺言
   の3種類があります。
 (2)いずれも、有効であれば、その「法的拘束力の強さ」は同じ
  です。
 (3)遺言書は、法律で有効であるための要件が定められてい
  ます。
  ア ①自筆証書遺言の場合、全文・日付・氏名を遺言者が自
     分で書くことが要件です。
    そのため、日付の記載がない、本人が書いた文字ではな
    い等、無効を主張されることが多いのです。
    ③秘密証書遺言も、法律で有効であるための作成方式が
     細かく定められていますので、無効となる場合が多くなり
    ます(③として無効な場合、①として有効かが問題になりま
    す)。
  イ また、有効な①自筆証書遺言と③秘密証書遺言でも、さら
   に家庭裁判所の「検認」というチェックを受けなければいけま
   せん。
  ウ これに対して、②公正証書遺言は、公証人(法務大臣から
   任命された公務員)が、法定の有効要件を満たしていること
   を確認して作成されます。
    また、公証人は、遺言者の「判断能力」もチェックしています。
    そのため、無効だと争われることは、ほとんどありません。
    なお、③公正証書遺言には、上記の「検認」は不要です。
  エ さらに、③公正証書遺言では、遺言執行者(遺言の内容に
   基づき相続手続きをする者)が必要な場合であれば遺言で
   指定しておくなど、遺言の執行すなわち円滑な相続手続の
   ことも考慮されます(遺言書で指定がない場合、家庭裁判所
   へ選任を申立てる必要性も出てきます)。

 (4)したがって、公正証書遺言は、法的拘束力が他より強いの
  ではなく、無効だと争われる可能性(もしくは無効である可能性)
  が他より低く、かつ遺言執行が適確・迅速になされる可能性が
  高いということなのです。

4 遺言書の作成には、信託銀行は関与する例がある他、士業では
 弁護士以外に行政書士や司法書士、税理士が関与しています。
  円滑な相続手続のために作成する遺言ですが、せっかく作成して
 も、①遺留分減殺請求、②遺言無効、③遺言の効力の範囲の争い、
 等問題が生じることも決して少なくありません。
  弁護士は、他士業と異なり、相続で生じ得るこれらのさまざまな問
 題への対応を、交渉や訴訟の代理人として多く経験しています。
  そのため、問題を避ける遺言書、あるいは問題となり得ることを踏
 まえて対策を講じた遺言書を作成するには、弁護士のアドバイスを
 受けることが最も適切です。

5 遺言書に関して、当事務所の「相続ガイド」のページにより詳しく
 記載しております。ご参考に、是非ご覧ください。

2014.02.01更新

賃貸住宅(相続税)

1.相続税対策で、賃貸住宅を建てた方からの法律相談
 が増えているようです。
  日経新聞にも、関連する記事が載っていました。

2.私も、最近、相続税対策に関連した、不動産に関する
 法律相談を何件か受けました。

3.賃貸住宅を建てることによる相続税対策とは、
  ① 更地に建物を建てることで、土地の相続税評価額
   を下げ、
  ② 賃貸住宅建築資金を借り入れることで、評価額
   から差し引ける負債額を増やす
 という方法で、課税価格計算の基礎となる相続財産の
 価格を下げることだと思われます。

4.しかし、この方法は、
  ① 借入金返済の負担があること
  ② 家賃による借入金返済は、家賃収入に左右される
   リスクを負うこと(空室リスク・修繕費の負担等)
  ③ 相続税が金銭で納税できない場合、売却の必要
   があるが、更地の時よりも売却が難しくなること
  ④ 相続税の物納は許可が必要であり要件を満たす
   必要があること(売却の見込み等)
  等、大きなリスクを伴います。

5.相続税対策をお考えの方は、メリットのみでなく、デメ
 リットについても十分調査し、適切なアドバイスを得る
 ことが大切です。

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