2014.01.11更新
遺言が必要な場合(同居家族による介護)
1 高齢の親と同居し、長年介護をしてきた子やその配偶者が、親の
死後、当然に、その親所有であったその家に住み続けられないと
いうことが少なくない、という記事が、日経新聞に掲載されていま
した(平成26年1月8日「女性と老後」)。
2 家の所有者が亡親(被相続人A)であり、同居の子(X)以外にも
相続人(Y、Z)がいるとします。
(1)その家以外に、分割する財産(預貯金や他の不動産等)が十分
にない場合、その家を売却して現金をY,Zに分けたり、Y、Zの相
続分に相当する現金をXが負担したりせざるを得なくなります(「代
償分割」といい、「代償金」を支払う方法で家を単独で相続するこ
とになります)。
(2)その場合、Xは、遺産分割協議において、自分や配偶者(B)が
長年Aを介護してきたことを、「寄与分」として主張することが考え
られます。
寄与分とは、被相続人の『財産の増加や維持』に『特別の寄
与』をした「相続人」に、法定相続分よりも多くの財産を取得させ
て、相続人間の公平を図るものです。
BはAの相続人ではないので、Bによる介護もXの寄与分と
して主張することになります。
(3)もっとも、
① 介護のような「療養看護型」の寄与分は、民法上の扶養義
務を超えた特別の貢献(親子関係に基いて通常期待される
範囲を超えたもの)でなければならず、認められる基準は厳し
いものです。
② また、Y、Zから、Xが同居することで得た利益(生前に特別
に受けた利益「特別受益」)を差し引くよう主張されることもあり
ます(相続分の前渡しとみて、分割前の相続財産に加算する
「持戻し」の主張)。
(なおこの点は、Aが「持戻し免除」をしておくことや、Aの介護上
同居が必要でやむなく同居したのであるから得た利益が少な
いと主張することが考えられます。)
(4)このような事態を避ける方法として、「代償金」の支払にあて
るために、Xを受取人とする生命保険を掛けておくことや、BをA
の養子にすることが考えられますが、最も多く採られる方法は、
Xに家を単独相続させるという内容の遺言を作成することです。
3 日経の記事はこれらの問題を指摘し、対策として上記の方法
を挙げていますが、特に遺言の作成については、Y、Zからの
遺留分減殺請求(遺言の内容にかかわらず、相続人に一定割
合の財産の相続を保障する制度)に配慮する必要があります。
4 遺言作成は、ご自身でも可能ですし、信託銀行等でも相談を
受け付けています。
ただ、弁護士は、相続人の代理人として多くの紛争に対応し
た経験がありますので、弁護士であれば、Y、Zから遺留分減
殺請求がなされる可能性をなるべく抑える「付言事項」を遺言
に記載する等、工夫した助言をすることが可能です。
信託銀行は、遺留分減殺請求があった場合、遺言執行をし
てくれないのが一般です。
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