相続ブログ

2019.06.26更新

修習生日記3

1 私は他の事務所で弁護修習をしていた72期司法修習生ですが、この度、事務所の先生が北薗先生にお願いしてくださったこともあり、北薗先生から具体的事例を基にした検討課題を2問頂けました。

 

2 1問目は、

・根抵当権の設定された土地の上に目的外建物が建築

・当該土地が競売にかけられている

・土地・建物共有者である夫婦のうち一方が死亡しており、他方が相続を放棄したため相続財産管理人が選任されている

という事例について、当該土地を購入しようとしている人に対していかなる助言をすることができるか、といった課題でした。

私は、土地及び目的外建物の共有者が同じであるため、この競売にかけられている土地を購入しても、土地に目的外建物所有者のための法定地上権(民法388条)が成立してしまうことを念頭に置いた起案を行いました。

しかし、相続財産管理人が選任されていることをどのように評価すればよいかいまいち理解できていませんでした。相続財産管理人としては、早く相続財産を売ってしまいたいというインセンティブが働くことを考慮する必要がありました。また、一括競売(389条)についても検討する余地があり、そこについても見落としていました。

問題全体として、北薗先生が想定していた解答をすることができておらず、競売や相続財産管理人の動きなどといった実務的知識が全く理解できていないことを痛感しました。

 

3 2問目は、

・建物賃貸借契約を締結し賃借人が居住し始めた後に、建物に賃貸人のための抵当権が設定し、抵当権設定登記が具備される

・建物賃借人が自ら代金を支出して建物にリフォームを施す

・建物賃貸人が自己破産

・任意売却もしくは競売により建物所有者が変わる

という場合における、①賃借人と新建物所有者の法的関係、②リフォーム代金をめぐる法的関係、を問う問題でした。

賃貸借契約が成立し賃借人が居住した後に抵当権が設定されていることから、賃借権は対抗要件を具備し(借地借家法31条1項)、抵当権実行により競売で建物を取得した者や任意売却により取得した者に対して賃借権を対抗することができる、また、賃貸人たる地位が建物新所有者に移転することから、敷金返還債務も新所有者に移転することになる、といった解答をしました。

リフォーム代金についても、「有益費」(608条2項)にあたるため、新賃貸人に償還を請求できるとしました。

解答としてはこれで問題ないとのコメントをいただきました。司法試験民法における基本的な論点が問われる問題であったため、受験生時代の知識で解答自体は出すことができましたが、抵当権が設定されている場合の賃借権の価値といったところまでは考えを馳せることができておらず、実務においては単に論点に沿って答えをだすのみならず、価格の低下が及ぼす影響などの視点が必要だと知りました。そして自身の実務的視点の欠落を感じました。

 

4 配属先や出向先ではない他の事務所の修習生であるにもかかわらず、短期間で2つも具体的事例に基づく検討課題を与えてくださり、丁寧な解説やコメントまでしていだいた北薗先生には頭が上がりません。私の弁護修習期間中、配属先の事務所ではなかなかこういった事例にはめぐりあえなかったので、今回このような勉強に機会を与えていただき感謝しております。私は修習後に弁護士になるかわかりませんが、良い法曹になっていけるよう、今回学んだような実務的視点を活かして、残りの修習にも全力で取り組んで参りたいと思います。

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